BAR小粋の独り言

引き出しが多い人


社会人になった時に

電話一本で片を付ける人に憧れた


「奴は引き出しが多い」


周りは彼をそう賞賛したものである。


まだ携帯電話のない時代

とにかくマメな方で

自費を投じて、よく遊ぶ人だった

時はバブル

この人物の交流関係は

資産家、上場企業役員、政治家、

不動産屋、地上げ業者

債権回収業者、ヤクザ、右翼、政治結社

警察幹部、自衛官、市長

金融関係、クラブのオーナー

宗教家、風俗店の店長、オカマバーのママ

ストリッパーから農家のじいちゃんまで


まずは、普通に誰とでも

対等に付き合っていた


みんな彼の事を「○○ちゃん」と呼び

頼りにしていた


眼光鋭く、物腰は柔らかく

いつも身なりをキチンとし

上着のポケットには飴玉と

切手の貼られた葉書が数枚


システム手帳のみをいつも片手に

ビッシリと書き込まれた中身は

他人が見ても暗号のよう。


色んな方を紹介していただいたが

殆ど今の私に残った付き合いはない。

何故なら「○○ちゃん」の付き合いだから



私も遮二無二、交流を拡げようと

頑張ったが、到底彼には及ばない、

ある時、彼がこう言った


「駆け引きは、自分が上に立って初めて成立するものだ」


「人に頭を下げるのも、上に立って初めて効果が得られる」



有名な方の言葉らしいが忘れた(苦笑)



携帯電話が普及し始め

私は有効に使いこなした

メモリーは常に一杯

週に何件も削除しても

すぐに一杯になった

システム手帳を携帯に持ち替えて

飛躍的に交流が拡がった

今やmixi Twitter

Facebookに限って言えば

加速度的に拡がりをみせる。


「俺は誰々を知っている」

さも自慢気に話す御仁を見掛けるが

「自分の手の内は他人に洩らすな」


彼はいつもこう言って、自重するよう

私に諭した。



重い病に倒れ

病室を見舞った私に

あるラインを譲ると彼は言ったが

丁重にお断りした(汗)


今日が彼の命日である


たしか、15年だったかな？

墓がどこだかも知らない

家族がいたのかも知らない


ただ、彼のダンディズムを

ほんの一部だけ継承しているかもしれない。


今日、久し振りにある方から電話があった

今夜21時〜二時間

女の子を4名手配出来ないか？


一時間後に、手配完了の報告を入れた。



私には何の利益も生まない


私は、電話の主の引き出しに過ぎない

手配を頼んだ奴も、私の引き出し。


引き出しは、たまに明け締めをせねば

錆び付く

情報はナマモノと保存のきくものと

分けて引き出しに収めねばならない

ナマモノは傷みが早く

他の物まで腐らせてしまう。


自分の引き出しは、常に鍛え上げねば

役に立たなくなってしまう



情報であったり

人であったり




ただ、


私は整理整頓が苦手である(爆)




今夜は雨


こんな日はゆっくりと

時間が流れる小粋です♪