2010年08月06日

ヒロシマ・・・

広島

ヒロシマ

HIROSHIMA


私の母は、その日、ヒロシマに居た。

大きなお菓子問屋の末娘として

蝶よ花よと

何不自由なく

育った。

お手伝いさんが8人居て

優しい父と

朗らかな母

特攻隊に志願した兄

ヤクザな兄

蝉がいつものように

やかましく鳴いている

一人部屋で人形と遊んでいたその時





ふっ、と体が宙に浮き

一瞬で部屋の外へ吹き飛ばされた

今の今まで住んでいた大きな二階建ては

あたかも巨人に蹴り飛ばされたがごとく

跡形も無くなった




見渡した風景は、

異国の地か

地獄か

耳を劈く轟音

天を覆うおどろおどろしい

暗雲

暗雲の中を縦横に走る稲妻



一瞬で

何もかも消し飛んだ

大きな家は

潰れ

大きな梁の下に

母の足だけが見える

体の半分を無くした父が

断末魔の叫びを上げる


火の手があがる潰れた我が家の

大きな梁に下敷きになった母を

助けるべく兄は泣きながら動かそうとする

母は、「行け!行け!」と






半日、その場で

父母を見ていた

段々と火の手があちらこちらであがり

彼女の目の前も火の手があがる

まるで生き物のように

両親を焼いていく

何も出来ず

ただ呆然と両親が焼けていくのを

だまって見ているしかなかった・・・・・



そして



目の前に繰り広げられる



地獄絵図








彼女は今

近くの小学校へ

原爆の語りべとして

出向く。

小学生達が

どこまで理解できているのか?

こんなに凄惨な話しでよいのか?

自問自答しながら

その日を語る





母が言う



「あの日…あの後…蝉は鳴いていたかしら?」






「うん。鳴いてた。たしかに鳴いてた」


そういうと

いつも涙している

小さくなった母がいる







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この記事へのコメント
たまに路上で轢かれた猫を見ても、
直視出来ずに目を背けるのに、
そんな沙汰じゃないんですよね。

恐ろしいことです。
でも、本当に恐ろしいのだということを伝えなければ、
小学生達にとって本当に平和な明日は来ないような気がするのです。
Posted by キリンさんキリンさん at 2010年08月06日 18:07
きれいごとではなく事実を語り継いでいかないと
必ず繰り返される・・・私はそう思います。

小さい頃からそういう場が必要なんじゃないかと
最近・・・ますますそう思うのです。
Posted by たなまっちたなまっち at 2010年08月06日 19:02
今でも夢でうなされることがあるようです

一生忘れる事はないのでしょう

とても

とても辛い事です
Posted by 御頭2御頭2 at 2010年08月06日 19:09
◆たなまっち

そうだね

リアルなアニメも多々ある中

現実に起こった話を

聞き入る事も大切かもしれません
Posted by 御頭2御頭2 at 2010年08月06日 19:14
そうだったのですね。。。
昨日は、いろいろ考えました。

子供がある程度大きくなったら、
広島・長崎に立つ機会をと思います。

ボタンひとつでこんなに怖いことになる・・・
目をつぶりたくなるような事実。
Posted by ruerue at 2010年08月07日 06:45
4~5年前の夏、広島の原爆ドーム行きました~

怖くて目を閉じたことを覚えてます。
大人になって、足がすくむなんて・・初めてでした。

映像で、アメリカ兵がガムを噛みながら・・ボタンを
押して、飛行機を旋回させるところは・・怒りと悔しさで
涙が・・出そうになりました。
Posted by トリム at 2010年08月07日 16:36
◆rue

被爆者手帳

交付されるには証人2名が必須。

小学生の頃、広島へ行き

ふと、駅のホームにあったノート「旅の一言」に

母が書き残した「私を覚えていませんか?」

これがキッカケで証人が・・・

そんな奇跡もあったヒロシマです



◆トリム

つい先日

エノラ・ゲイ号の機長の息子さんの談話が

ネットで話題になってました

息子さんの発言には

なんの影響力もないし

彼にインタビューして

それをニュースとして取り上げる

意味のない報道をする日本のメディアに

ヒロシマの本質が風化していく疑念を

持たざるを得ません。。。。
Posted by 御頭2御頭2 at 2010年08月07日 17:29
 
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